パレート図は知っていますか?
あまり知られていないかもしれません。
テレビでも使われていることを見たことがありません。
作るのに、少し手続きが必要です。
それが好かれていない理由かもしれません。
ですが、せっかく興味を持ってクリックしてくださったのですから、あなたの資料にパレート図を添えて、センパイをギャフン!と言わせちゃってください。
最後まで見て行ってくださいね。
目次:
パレート図とは
パレート図は「棒グラフ」と「折れ線グラフ」の複合グラフです。
複合グラフとは、1つのグラフに2つのグラフが同時に表示されているグラフを言います。
パレート図のサンプルを示します。
これは、「野菜の人気総選挙」の結果をまとめたものです。
「棒グラフ」は「票数」を現しています。
目盛りは、左側の軸を見てください。
パレート図の一番左は「トマト」を現しており、票数は30票集めたことになります。
そのとなり、「きゅうり」「キャベツ」「とうもろこし」・・・と段々票数が少なくなっていることに気が付きます。
そうです。
パレート図の「棒グラフ」は「数が多い順に並べる」必要があります。
次に「折れ線グラフ」を見てください。
「折れ線グラフ」は「累積%(パーセント)」を現しています。
「累積%(パーセント)」とは、『%(パーセント)』を『累積』、つまり加算したものです。
実は、「累積%(パーセント)」と表現するコトはあまりありません。
累積比率や累積百分率と表現するコトが多いようですが、ちょっとわかりにくい、というか聞きなれない言葉です。
なので、QCたか流での表現は「累積%(パーセント)」とすることにしました。
百分率は%(パーセント)のことですし、今どき百分率などと言うヒトもいないでしょう。
話を戻しまして、「累積%(パーセント)」は、%(パーセント)を加算していけばいいわけです。
サンプルの例でいえば「『全体の得票数』に対する『各項目の得票数』が%(パーセント)で表現されるわけですから、
「トマトの%(パーセント)」、「きゅうりの%(パーセント)」、「キャベツの比%(パーセント)」・・・
これらを全部加算していくこと、
これが、「累積%(パーセント)」ということになります。
もっと端的に言えば「それぞれのパーセントを足していく」ですね。
もう一度、グラフを見てみましょう。
全体の票数のうち、「トマト」の%(パーセント)はいくつでしょう?
総票数が89、「トマト」の票数は30。
ですから、『トマトの%(パーセント)』は約34%です。
「折れ線グラフ」の目盛りは、右側の軸を見てください。
次に「きゅうり」「キャベツ」と%(パーセント)を足して行くと、折れ線グラフは右肩上がりで増えていきます。
全部足していってますから当然ですね。
最後は100%(パーセント)となるところまで上がって終わりです。
何のためのパレート図?
パレート図は、品質管理手法をまとめた「QC7つ道具」にラインナップされています。
つまり、品質管理を行ううえで、基本となるツールということです。
例えば、いろいろな不適合が発生している状況を想像してください。
全ての不適合を取り除けば、もちろんいいに決まっています。
ですが、不適合率が限りない低い事象に対して、時間もお金もかける必要があるでしょうか?
もっと、不適合率が高い事象をいち早く、重点的に改善し、不適合率を下げたほうが有意義な時間とお金の使い方です。
この考え方を「重点指向」と呼んでおり、この「重点指向」に準じた判断を正確に行うツールとして、パレート図を使用します。
パレート図 Parete diagram
項目別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、累積和を示した図。
例えば、不適合品数を不適合の内容の別に分類し、不適合品数の順に並べてパレート図を作ると不適合の重点順位がわかる。(Z8101-2)
-クォリティマネジメント用語辞典(2004年発行 吉澤正 日本規格協会)より引用
重点指向 priority approach
問題解決において(中略)解決が困難でも結果への影響の大きい原因に高い優位順位を与えて、優先順位の高いものから取り上げてその解決に取り組んでいく考え方。
-クォリティマネジメント用語辞典(2004年発行 吉澤正 日本規格協会)より引用
誰が考えた?パレート図?
パレート図を考えたヒトは「パレートさん」です。
ヴィルフレド・パレート。
19世紀から20世紀にかけて活躍したヒトで、経済学者、社会学者です。
経済学分野で有名な「パレートの法則(80対20の法則)」「パレート効率性(パレート最適)」を考えたヒトでもあります。
「パレートの法則」は、簡単に言えば、「全体の80%は普通のヒト、20%は特別なヒト。この20%のヒトたちこそ大切にしないといけない」です。
ただ、ヒトは正規分布に従いますから、上記の例えは誤りです。
特別なヒトは、全体の0.3%しかいません。
とは言え、少数を大切にするという方向性は共通ですね。
「パレートの法則」は、所得分野で提唱されたものです。
全世界の20%のヒトに社会全体の富が集まり、80%の低所得者に分配される、といったものです。
現代では、上位10%の富裕層が世界の80%の資産を保有していますので、格差はパレートが想像した以上に進んでいますね。
次に「パレートの効率性」についてです。
パレートの効率性は「限りある資源をムダなく再分配する」ということですが、違うアプローチから説明すると「誰かの犠牲が誰かを救っている」と言えます。
例えば、HPの減った戦士に、僧侶がMPを使ってホイミをかけます。
僧侶から見れば、MPを消費するから「犠牲」です。
戦士から見れば、HPが回復するから「救い」です。
その結果として、全滅することなく戦闘に勝利することができます。
社会は、誰かの「犠牲」をもとに成り立っているものです。
しかし、この「犠牲」をどう捉えるかが社会にとって大切なことです。
自身のMPを消費した僧侶にとって、ホイミをかけた「犠牲」的な行為は、実は自身にとって「幸福」な行為と認識することが重要なのです。
これは「SDGs」の求めている「誰一人取り残さない」の解釈だと考えてよいでしょう。
「犠牲」のまま終わらせない。
「犠牲」をそのヒトにとって「幸福」と思ってもらえる行為に変換させる。
これらは、搾取する側(富裕層)の仕事です。
戦士から僧侶へ「いつもありがとう」と伝えることで、僧侶の「犠牲」は「幸福」へと変わります。
「SDGs」はフードロスや資源、環境だけの話になりがちです。
それも大切なアプローチですが、あらゆるヒトが「幸福」になれる方法論をもっと議論するべきです。
その足掛かりとして、ジェレミー・ベンサムが提唱した「最大多数の最大幸福」にヒントがあるのだと、考えています。
品質管理の仕事を長く続けてきましたが、この仕事はまさに「自己犠牲」です。
「自己犠牲」を「犠牲」と思ったら続けられません。
「犠牲」の先に、システムが正しく回り、品質問題が発生しなくなる「幸福」を想像するからこそ続けられます。
ボクの「犠牲」が社会全体の「幸福」につながること、それがQCたか流の「SDGs」です。
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実際にかいてみよう
準備【チェックシートの作成】
チェックシートを準備しましょう。
今回は「野菜の人気総選挙」でした。
左のセルに野菜の名前、右のセルに票数を入れます。
テクニックは、「その他」の行を1行開けておくことです。
パレート図は、左から多い順に並びます。
ですから、チェックシートの順番も並び替えます。
ピーマンの票数をクリックしましょう。
Excelの「ホーム」タブの右側に「編集」があります。
「並び替えとフィルター」のコマンドがありますので「降順」をクリックします。
これで、チェックシートが「降順」に並び変わります。
そうしたら、外れていた「その他」をくっつけて、チェックシートを完成させます。
準備②【%(パーセント)を追加】
票数の合計を求めるために「SUM関数」を使います。
SUM関数:
=SUM(トマトの票数C3:その他の票数C10)
トマトからその他までの票数をすべて足す
計算値が返ってきます。
合計は「89」ですね。
なお、「その他」のセルの下に「合計」のセルを作っています。
次に、それぞれの野菜の「%(パーセント)」を求めます。
「票数」の右となりのセルに「%」を入力しましょう。
それでは、それぞれの「%(パーセント)」を求めていきましょう。
計算式:
=各野菜の票数C○○/合計の票数C11×100
全体に対する各野菜の割合を100倍して%を求める
ここで、合計のセルは「固定」させます。
計算式バーで、合計のセル「C11」をクリックし「F4キー」を押しましょう。
「$マーク」が付けば、成功です。
計算結果は、小数点以下が多く表示されることもありますから、必要な桁数にしましょう。
「ホームタブ」の中央、「数値」を押して、桁数を変更しましょう。
QCたかは、小数点以下は表示させない設定にしました。
そうしましたら、計算式を一気にコピーします。
「セル右下」の「緑の四角」を「ダブルクリック」して「オートフィル」させます。
準備③【累積%(パーセント)を追加】
チェックシートの最後です。
パレート図もう一つの主役「累積%(パーセント)」を追加していきます。
「%(パーセント)」の右となりのセルに「累積%(パーセント)」を入力します。
それでは計算式を入れていきます。
まず、「トマト」の「累積%(パーセント)」欄には、そのまま隣の「%(パーセント)」を引用しましょう。
計算式:
=「トマトの%」D3
セルの値をそのまま引用する
今ほど求めた「トマトの累積%(パーセント)」に「きゅうりの%(パーセント)」を足しましょう。
計算式:
=「トマトの累積%」E3+「きゅうりの%」D4
2つのセルの計算値を足す
あとは、「その他」のセルまで同じ計算式が続きます。
つまり、「きゅうりの累積%(パーセント)をクリック」して、「右下の四角」を「ダブルクリック」して「オートフィル」させます。
はい、チェックシートが完成しました。
お疲れ様でした。
パレート図をかく①【ひな形の準備】
ようやく、パレート図に取り掛かれます。
しかし、ここまでの前段階が重要なのです。
前段階で手を抜くと、決してよいことはありませんので、気を付けましょう。
結果を支えるのはプロセスですよ!プロセスを大切にしましょう。
先ほど作ったチェックシートの「野菜の名前」セルから「其の他の累積%(パーセント)」セルまでドラッグで選択しましょう。
そうしたら、グラフを表示させます。
グラフは簡単に表示させましょう。
「Altキー」→「Nキー」→「Rキー」と順番に押していきます。
同時押しではありません。
「グラフの挿入」というウィンドゥが表示されますので、
- すべてのグラフ
- 組み合わせ
- チェックボックス
- OK
と選択していきましょう。
グラフの種類で、
- 票数が「集合縦棒」
- 累積%(パーセント)が「折れ線」
になっていることを確認しましょう。
なっていなければ、プルダウンで選択しましょう。
そうすると、もうグラフが出ました。
上のグラフのままでは、ぜんぜんパレート図ではないですね。
「%(パーセント)」の情報が不要ですから、消しましょう。
消し方は、
- グラフを選択
- 右の「グラフフィルター」を選択
- 「%(パーセント)」のチェックを外す
- 下の「適用」を選択
です。
これで、「%(パーセント)」の要素が消えました。
次に「縦軸」を調整していきます。
グラフの左側が「票数」の軸、右側が「累積%(パーセント)」の軸です。
- 「票数」の軸は、「最大値」が「総得票数」になるように設定します。
- 「累積%(パーセント)」の軸は、「最大値」が「100%」になるように設定します。
まず、「票数」の軸から変更します。
グラフを選択し、
表示されたメニューに「最小値」「最大値」を入力する欄があります。
今回は、総票数が89ですので、「最大値」に「89」を入れました。
補足:
- 最小値が変化しても困るので、あえて「0」を入力しています。
- 異なるメニューが表示された場合「軸のオプション」→「グラフのマーク」を選択してください。
「票数」の軸の設定を変えたことで、棒グラフが全体的に下がります。
「ズッキーニ」と「セロリ」は、もはや、あるのかないのかわかりませんね。
でも、それでよいのです。
「ちっちゃいことは気にするな♡それがパーレト図の精神」です。
まだまだ、続きます。
次は「累積%(パーセント)」の軸を調整します。
グラフを選択して、「累積%(パーセント)」の軸の上で「左クリック」です。
「書式の設定」はすでに出ているので、「右クリック」ではなく「左クリック」です。
左の軸「票数」の「総票数89」で、右の軸「累積%(パーセント)が「100%」になっていることを確認してください。
パレート図をかく③【横軸の設定】
次に、横軸を設定していきましょう。
まず、棒グラフを横に広げます。
「棒グラフ」を触って「左クリック」です。
今まで、Excel右端は「軸の書式設定」でしたが「データ系列の書式設定」に変わりました。
「要素の間隔」を「0%」にしましょう。
すると、棒グラフは横に伸び、ぴったりとくっついてくれます。
次に、折れ線グラフを設定しますが、ちょっと、ヘンな手続きをします。
普段やることはないと思います。
今、グラフには、第1軸に「棒グラフ」、第2軸に「折れ線グラフ」を設定しています。
横軸に「トマト」「きゅうり」・・・と表示されていますが、これは第1軸「棒グラフ」に対しての要素に設定されています。
実は第2軸「折れ線グラフ」の横軸の要素もあるのですが、それは普段隠れていて見ることがありません。
パレート図をかく手続きとして、この隠れた第2軸「折れ線グラフ」の横軸の要素を表示させます。
やり方は、グラフを選択して、
- 右側の「グラフ要素」を選択
- 「軸」の「>」をクリック
- 「第2横軸」のチェックボックスをクリック
すると、グラフの上側に第2横軸、つまり「折れ線グラフ」の横軸が表示されます。
これで、「折れ線グラフ」の横軸を動かすことができます。
何をしたいかと言いますと、折れ線グラフは、棒グラフの「真ん中」を起点としています。
この「真ん中」を「左端」にしたいだけです。
昔は、パレート図は手書きだったでしょうから、「真ん中」を「左端」にかくことは簡単だったでしょうが、今はこんなにめんどくさいことになっています。
別に「真ん中」でよくない?
とも思います。
実際に「真ん中」でよければ、簡単にできます。
ただ、形にこだわる「一部の信者」を満足させないと、あなたが怒られてしまいますので、それはQCたかの本意ではありません。
あなたも「一部の信者」も共に満足することで、みんなで幸福になりましょう。
さて、それでは、表示された第2横軸を左クリックします。
Excel右端は今度「軸の書式設定」と表示されます。
めでたし、めでたし。
再びチェックシート【折れ線グラフの参照範囲変更】
実は、折れ線グラフの起点は間違えています。
と言っても、「わざと」間違えたまま進めてきています。
折れ線グラフの起点は「トマト」の棒グラフの左上の肩に乗っています。
パレート図の折れ線グラフは、「0」を起点としなければなりません。
つまり「トマト」の棒グラフの左下の足元にいないとダメなわけです。
よって、これから折れ線グラフの起点をずらす操作をします。
まず、チェックシートの「トマト」セルから「累積%(パーセント)」の最下段まで選択します。
そしたら、そのままセルをドラッグして1行分下げます。
下げたら、「累積%(パーセント)」直下の空セルに「0」を入力します。
ここまでで、チェックシートは完成です。
そのままグラフを操作しましょう。
グラフの「折れ線グラフ」を「左クリック」します。
そうすると、表の中にグラフの引用範囲を示すカラフルな色枠線が表示されます。
この場合、
- 紫は、「横軸」の引用範囲
- 青は、「縦軸」の引用範囲
- 赤は、「要素名」の引用範囲
です。
今、ボクたちは「折れ線グラフ」の起点を「0」にしたいと思っています。
そして、チェックシートには「0」を入れました。
なので、グラフの引用範囲をチェックシートの「0」まで広げてあげればよいのですね。
横軸は青い枠線でした。
ですから、
「青い枠線」の「カドを触って」、「伸ばす!!」
すると、どうでしょう?
「折れ線グラフ」が「0」の起点位置まで動きました!
成功です!!
最後の仕上げ【これがパレート図だ!】
いよいよ、最終工程です。
ここまで付き合ってくれた方に感謝です。
「折れ線」グラフの起点を動かすために表示した第2横軸の要素を消します。
第2横軸の要素を左クリックします。
Excel右端の「軸の書式設定」を操作します。
「軸のオプション」→「グラフマーク」→ラベル→「ラベルの位置」までクリックしていきます。
プルダウンメニューに「なし」がありますので、選択します。
すると、キレイに消えてくれます。
あとはパレート図に関わらず、グラフに必要な要素やデザインを加えていきましょう。
「グラフタイトル」「軸の名称」は必ず記載しましょう。
グラフの基本です。
はい、完成です。
お疲れ様でした。
このようにパレード図を正しくかくには、かなりメンドウな手続きが必要です。
ですが、パレート図をかくことで、どこに着目して改善をすればよいか、ターゲットの絞り込みに有用です。
正しくかいて、正しく分析し、改善に活かしてください。
そして、センパイをギャフン♡と言わせちゃってください。
それでも、こんなメンドウなコトヤダ!ってヒトは、ものすごく簡単にかける方法を紹介していますので、そちらも参考にしてください。
アナタはどちらを選ぶかな??
オススメ書籍
リンク
なかなかパレート図に特化した書籍はありません。
分かりやすくパレート図を紹介する書籍として、本書はいかがでしょうか。
QC検定を受ける方は、パレート図の理解が必須ですから、勉強してみてください。
実際に、手を動かし、書いてみることが一番よいです。
ぜひ、チャレンジを!