Change Control(CC)こそ正義!悪魔的Copy Exactly!(CE!)を駆逐せよ!!

2024/02/17

品質管理

t f B! P L
 最終更新日:2024年2月17日


どうも、おばんです。QCたかです。

目に見えない変化。
恐ろしいものです。

ウィルスに感染する、家が少しずつ傾いている、お菓子の重量が減っている、突然別れを告げられる。

企業にとっても、目に見えない変化は捉えることが難しく「いつの間にか変わっていた」という事態が起こることもしばしば。

この変化を極端なまでに許容しない「Copy Exactly!(CE!):コピーイクザクトリー!」に対して、唯一の対抗手段である「Change Control(CC):チェンジコントロール」を解説します。

最後まで、見て行ってね!


正義 VS 悪魔

半導体業界では、半導体を製造するプロセスの超精密性からあらゆる変化を嫌います。

その思想は昔「○○入ってる」のコピーでコマーシャルをしていた世界的超大手企業が考案したもので、今や半導体業界のスタンダードとなっています。

「あらゆる変化」と言うと具体的ではないですが、文字通り「あらゆる」なのです。

色、形、寸法、製造元、条件、材料、工程・・・

このような変化は「許容しない」「受入拒否」「購入できない」と半導体メーカーは言います。
同じことを半導体装置メーカーも言います。

半導体装置メーカーに部品を入れたい部品メーカーは、何の変化を許されず、コストダウンを要求されながら作り続けるのです。

この悪魔的なやり方を「Copy Exactly!(CE!)」と呼びます。

しかし唯一、「Copy Exactly!(CE!)」に対抗できる手法があります。

それを「Change Contorl(CC)」と呼びます。

正義のChange Control(CC)

「Change Control(CC)」は「変更管理」です。
半導体(装置)メーカーが求めている「Change Control(CC)」は、「予期せぬ変化に備える管理をせよ」です。
そして「変化は許容しない」のが基本スタンス。

しかし、半導体(装置)メーカーも、「変化ゼロ」はあり得ないことは承知済み。
逃げ道として

どうしても変更が必要なら、変更前後で変化がないことを証明してくれれば、許容してやらなくもないぜ?

と言う妥協案を提示してきます。

この妥協案こそが「悪魔的Copy Exactly!(CE!)」を駆逐できる唯一の戦術。

要は、変更前後で変化がないことを証明すればいいのです。

繰り返します。

半導体(装置)メーカーが示した「Change Control(CC)」は、「変更は許容しない」。
でも「変更するなら、証拠を示せ」という妥協案がある。
部品メーカーは、この妥協案に真っ向から立ち向かっていく。
この姿勢こそ部品メーカーの正義。

いわば、

「正義のChange Control(CCoJ:Change Control of Justice)」

です。

変化を捉える【5M+E】

「Change Control(CC)」は変更管理と説明しました。

変更管理は、変化を捉えることです。
変化を捉えるには、【5M+E】を監視することが必要です。

5M+E】は、
  • Man(人):ヒトの変更
  • Machine(機械):機械、設備の変更
  • Material(材料):材料、素材、材質の変更
  • Method(方法):工法、工程の変更
  • Measurement(測定):測定機器、測定方法の変更
  • Environment(環境):環境の変更
項目は多いですが、それぞれ戦い方を見てみましょう。

ヒトの変更

ヒトの変化は当たり前に発生します。
時間をかけて「悪魔的Copy Exactly!(CE!)」と戦う必要はありません。

ヒトを個人として扱わず、システムとして捉えればよいです。

例えば、資格認証の仕組みを構築し、一定のスキルを持ったヒトを作業に従事できるシステムにする。
このシステムでヒト個人にスキルの差はないので、ヒトが変わっても「変更には該当しない」ということです。

一見、変更に見える内容を変更に該当させないこの手法を「ステルス化」とでも呼びましょう。

機械、設備の変更

機械、設備の変更は、頻度は低くても発生します。
老朽化による更新が該当します。

独自で決めた、機械、設備の点検や校正ルールを決めたシステムで運用すればよいです。
このシステムに基づき点検や校正を実施し、設定したアウトプット通りになっていることを確認すれば、機械、設備が変わっても「変更には該当しない」ので「ステルス化」が可能です。

ですが、100%同じ機械、設備になる可能性はかなり低い。

その場合は、機械、設備からのアウトプットに変化がないかを証明すればよいのです。
アウトプットは、例えば加工機なら加工後の寸法とか、熱処理炉なら熱処理後の硬度とか。
目に見える形で、アウトプットを比較すればよいのです。

比較も1個ずつのサンプルでは物足りない。
最低でも3個、最高で30個のデータがあれば戦えます。
サンプル数が多くなれば「平均値や標準偏差の比較」や「検定・推定による標本の比較」ができるようになるので、できる限り多くのデータを集め、統計的攻撃力を高めましょう。

材料、素材、材質の変更

変更管理において、このジャンルが一番難易度が高いです。
変更が通らないケースが多い。

比較となれば、鋼材メーカーが発行する材料証明書ミルシートの比較、加工後の性能比較などになるでしょう。

これも比較できるデータは多い方がいい。
できる限り多くのデータから統計的に比較できるようにしましょう。

工法、工程の変更

このジャンルは多岐に渡ります。
ただ、戦い方はほかの項目と同じ。
いかに統計的データを集め、攻撃力を高められるかにかかっています。

この項で特に説明したいのは「購入品の変更」です。

「購入品の変更」は管理が難しい。
勝手に変わっているケースもあります。

そうはさせないシステムと購買先との関係性をうまく作っていけるかが重要なカギ。
  • 変更する場合は事前に連絡を受ける(変更管理システム)
  • 受けるための仕組みを構築する(コミュニケーション)
  • 定期的にお願いをする(教育、説明)
購入品の予期せぬ変更は必ず起きるもの。
変化にすぐさま対応できる多重購買体制や変更管理システムの維持・管理。

とても大変な仕事ですが、「Copy Exactly!(CE!)」を駆逐するには、このような地道な活動が大切なのです。

測定機器、測定方法の変更

このジャンルになると、急に盛り上がりを見せます。
それは「MSA:測定システム解析」という手法が世の中にあるからです。

MSAは測定のばらつきを統計的に評価する手法です。
複数の測定者、測定器、測定サンプルを繰り返し測定しばらつきを評価する「Gage R&R」がよく使われます。

理解し、コツを掴むには大変ですが、一度やってしまえばなんてことはない。

大変な反面、最強の武器になります。
完全に駆逐可能です。

環境の変化

温度、湿度、作業場、建屋などの変更です。
温度、湿度は季節で変わるものですが、半導体業界は温湿度一定のクリーンルームで作業をしているので、温度、湿度に対しても敏感です。

とは言っても、今まで管理していないのであれば、変更対象ではありません。
「管理していた項目を変更する」となると変更対象となってしまいます。

建屋の移動とかは、もう不可抗力ですから、イチ担当者のボクたちがどうこうできる問題ではありません。

新旧の建屋で製造したものアウトプット比較で戦いましょう。

まとめ

「悪魔的Copy Exactly!(CE!)」を駆逐する方法は「正義のChange Control(CCoJ)」が有効であることがわかりました。
その手法は、下記の3点でした。
  • 変更をシステム化して「変更と見せないステルス化」
  • 変更前後データを集め「統計的データ分析」
  • 変更の土壌を構築する「変更システムの泥臭い維持・管理」

変更には、必ずリスクがついてきます。
半導体(装置)メーカーも、それを理解したうえで「Copy Exactly!(CE!)」を要求してきています。

そして、リスクがあることは部品メーカー側も当たり前に理解するべき内容です。

リスクを恐れ変更を止めてはいけません。
リスクを承知したうえでも、必要な変更は行っていくべきです。
リスクを評価し、十分に小さければ何も問題はないのです。

時代の変化と共に、ツールも機械も考え方も変わってきます。
「変更を禁止する」などと、ボクは時代遅れの海外的発想だと感じています。

そんな発想に、未来を生きる私たちは挑んでいかなければいけません。

新しい技術、新しいアイディアで現状をドンドン変化させ、今よりラクに最高の品質が維持できれば最高です。

「Copy Exactly!(CE!)」に「Change Control(CC)」の槍を突き刺し、風穴を開けて行こうではありませんか!!

自己紹介

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品質管理に関するブログ「QCたかのたか流QC」では、自身の経験を活かし、品質管理への疑問、新しい提案、QCスキルのテクニックなどを配信。 「みんながハッピ〜♫になる品質管理を!」をポリシーに活動中。 品質管理検定1級合格。 日本品質管理学会所属。 機械加工、設計を経て、現在は半導体業界のメーカーで品質管理に従事。

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