ボクは、魚釣りが好きです。
釣った魚を三枚におろして、きれいに骨が取れたときは気持ちいいもんです。
そんな、魚の形に似た「絵」を使って原因分析をする手法として「特性要因図」が有名です。
有名なツールではあるのですが、好きではありません。
みんな、ホントに使ってる!?
特性要因図とは?
特性要因図は、QC7つ道具のひとつであり、基本的なツールと認知されています。
使用する理由は「問題解決」のためであり、混沌とした事象をひとつづつ分解、整理し、重要と思われる要因をピックアップすることを目的にしています。
魚の頭部に「解決したい問題」、頭部から「背骨」を伸ばし、考えられる要因を「大骨」で繋ぎます。
この考えられる要因は、一般的に「4M(よん-えむ)」を選択します。
「4M」は
- ヒト(men)
- 方法(method)
- 機械(machine)
- 材料(material)
の英単語の頭文字をとったものです。
頭文字の「M」が4個ありますので「4M」と呼びます。
なぜ、この4つかと言うと、問題の要因は、これら4Mを起因にして発生することが多いためであり、これら4つを特別に管理することを「4M管理」と呼びます。
「4M」を「大骨」で繋いだあとは、「小骨」で細かい要因を結びます。
それより更に細かい要因がある場合は「孫骨」を「小骨」に繋ぐことも許されています。
特性要因図を作るときは、「一人でやらない」ことが重要と言われています。
一人でやると、意見が凝り固まり、広がりが出ないからです。
その解決策として、関係者で集まり「ブレーンストーミング」で多くの意見を出しながら、まとめていくことが有効と言われています。
ただ、このやり方も、しっかり「コントローラー」を配置しないと、権力者や発言力のあるインフルエンサーに誘導されたり、結果的に意見が発散しまとまらない、などが起こりえます。
ヒトが集まればよいこともありますが、集まりすぎても解決には至らないケースがあることを覚えておくとよいでしょう。
特性要因図 Ishikawa diagram
特定の結果と原因系の関係を系統的に表した図(Z 8101-2)
魚の骨ともいう。
品質の特性や不良個所(特性)とその原因(要因)との関連を表し、それぞれの関係の整理に役立ち、重要と思われる要因と対策の手を打っていくために用いる。
QC七つ道具の一つ。
特性要因図は「話し合いの道具」ともいわれ、ブレーンストーミングなどにより作成し職場での問題点の改善、実験計画における要因の整理などによく用いられる。
ークォリティマネジメント用語辞典 2004年出版 吉澤正 日本規格協会より抜粋
特性要因図のデメリット
特性要因図は「問題を解決する」ツールではありますが、最良のツールではないと考えています。
QCたかが考えるデメリットは下記です。
- 事象が漏れなく列挙できているか、わからない
- 複合的な要因を示せない
- 重要要因が並列扱いで、順列が付けられない
- 真の要因に辿り着けない
- 特性要因図のお絵描きに時間がかかる
- 時間がかかるわりに説得力がない
事象が漏れなく列挙できているか、わからない
これは、特性要因図という枠の中に収めようとすると、スペースが足りなくなり、「もう、いっか」となるケースが多くあります。
これはもったいないことであるし、スペースの関係で思考や考慮が停止してしまうことは非常にもったいないことです。
ですが、ヒトが分析をする以上、これは避けられません。
これを防ぐというわけではありませんが「FTA(故障の木解析)」というツールが世の中にあり、このツールであれば、事象を漏れなく列挙することができます。
つまり、上位互換のツールがある以上、特性要因図に出番はありません。
複合的な要因を示せない
これは、「ヒト」や「機械」を両方にまたがって問題が発生していた場合などを想定した場合、特性要因図はわざわざ、分解をしてしまうことになります。
分解をしてしまうことで、関連していた内容が分断され、あたかも別々の問題となって見えてしまいます。
このような問題に対しては「親和図法」というツールがあります。
これも上位互換のツールですから、特性要因図に出番はありません。
重要要因が並列扱いで、順列が付けられない
例えば、「方法」と「モノ」に重要要因があったとします。
どちらも改善が必要と判断されましたが、予算、時間の関係から優先順位を決めなければならない状況となりました。
この場合、どちらを優先すべきか、特性要因図からは読み取れません。
結局は、上長や関係者のディスカッションにより決めることになり、客観的な視点がないことが多いです。
客観的に順位を決めるツールとして「FMEA(故障モード影響解析)」があります。
これは、要因に対し数値でランクを付与します。
これにより、客観的かつ明確に順位が付けられます。
当然、特性要因図に対しては上位互換のツールです。
真の要因に辿り着けない
特性要因図は、いろいろな意見を抽出することに意義があります。
それはそれで大切なことですが、多くの意見を出すことに全員が集中するため、一つの意見が深堀されにくい傾向があり、いずれ発散してしまいます。
つまり、まんべんなく意見を出した結果、いずれも中途半端で終わるケースが多いです。
本当に欲しいのは真の要因ですから、多くの意見から重要な要因を絞り込み、その重要な要因に対し、集中的に議論をすべきです。
そのためのツールとして「なぜなぜ分析」が非常に有効です。
「なぜ、なぜ・・・」と繰り返し原因を追究し、真の原因へ辿り着こうとするツールです。
特性要因図にも、小骨、孫骨、ひ孫骨・・・と理論上は対応可能なのですが、そんな分析を目的としたツールではないですし、描くスペースもありません。
ですから、真の要因を掴むためのツールとしては不適です。
こちらも優秀な上位互換のツールがありますので。
特性要因図のお絵描きに時間がかかる
特性要因図を使う以上は、ルールに従って、かつ、見やすく作らなければなりません。
作るときは、ExcelやPowerPointを使用する場合が多いと思いますが、
- テキストボックスの位置
- フォントの大きさ
- 配置スペース・・・
気を使うところが多すぎるし、描くスペースが限られているため、考える時間より作業する時間の方が掛かります。
意見がいっぱい出たら、普通はうれしいのですが、特性要因図を描く場合は、ぜんぜんうれしくありません。
途中で、「描くスペースないなぁ・・・」とお絵描きのことばっかりが気になって、重要な中身に頭を使えていません。
使い勝手の悪い分析ツールは、みんなが使わなくなるものです。
時間がかかるわりに、説得力がない
お絵描きが終わった特性要因図を、センパイや上長に見せたときの反応はどうでしょうか?
「上手に描けているね」
「ちゃんとまとまっているよ」
「重要要因はコレなんだね」
「で?この先、何するの?」
何をするのでしょう?
特性要因図の最大の弱点はココですね。
要因がわかったところで、この先、どのようにアクションを起こし対策をしていくのか、ここが見えないことです。
また、別のツールを使って対策を実施しなければならない。
「じゃあ、何のためにやったんだ!?」
となります。
非常に残念なツールです。
上位互換のツールが数あるなか、時間をかけてお絵描きしたわりに、最後の対策には使えない。
このツールの出番は、いったいドコにあるのでしょう?
新提案「Six Pillars」
特性要因図で4Mごとで要因を出す作業ですが、この作業自体意味はないと思っています。
それは
「確認すべき内容は、議論をするまでもなく、すでに決まっている」
からです。
要は「自明」なのです。
「自明」なことを、多くのヒトが集まって議論すること自体がムダな時間です。
不適合の要因をに対する基本的なスタンスは、
- ルールがあるか
- ルールに対してどう実施したのか
これだけです。
4Mに対し、これを確認するだけで、真の原因は特定できます。
ここで「4Mで足りてる?」という議論が起きます。
そこで過去の知識人は
- 「測定/検査(Measurement)」を加えて[5M」
- 「マネジメント(Management)」を加えて「6M」
- 「環境(Environment)」を加えて「6M1E」
- 他にもいろいろくっつけて「8M」とか・・・
と、数を増やすことで、「やった感」を演出してきました。
ただ、これらのアプローチは全体をうまく捉えていません。
もう少し、上手なアプローチがあるはずです。
そこで、QCたかが提案するのが
「Six Pillars」
です。
4Mを含めた6個の要因を基本としています。
- 4M(ヒト、モノ、機械、材料)
- チェンジコントロール(変更管理)
- リスクマネジメント
そして、これら6個の要因に対し、それぞれ
- ルールがあるか
- ルールに対し、どう実施したのか
これを、問うていきます。
ルールがなければ、ルールを作ればよい。
ルールがあって、ルール違反をしたのなら、厳正に対処すればよい。
ルールがあって、不足しているのであれば、ルールを見直せばよい。
たった、これだけのアプローチです。
ヒトに対しては、スキルマネジメントとして、スキルの範囲をもう少し詳細に定義しました。
ヒトが必要とするスキルは、
- モラル(moral)
- メンタル(mental)
- フィジカル(physical)
- リテラシー(literacy)
- テクニック(technique)
です。
それぞれのスキルを明確にし、そのスキルが満足しているかを問えばよいのです。
なお、この5語の頭文字を取って
「mmplt:ミルプト」と名付けました。
この「mmplt:ミルプト」は、生成AIとディスカッションするなかで生まれた言葉で、彼は「架空の魚」をイメージして提案してくれました。
とてもさわやかで気に入っています。
皆さんも、ヒトのスキルをマネジメントするときは、「mmplt:ミルプト」を思い出しスキルマップに反映して頂ければと思います。
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