ヒトは「正規分布」する

2023年4月20日木曜日

統計学 品質管理

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最終更新日:2023年8月12日



どうも、おばんです。QCたかです。

色々なヒトが社会で活躍しています。
缶コーヒーのコマーシャルではないですが、誰かの仕事で世界が成り立っている。

素晴らしいコピーです。

組織の中には考え方も行動も異なるヒトたちが仕事をしています。

みんなが「同じ方向を向いて」仕事はできるものでしょうか。

今回はこんな話です。
最後まで、見て行ってくださいね。


「正規分布」とは

品質管理を行ううえで、

「データでモノを言う」

姿勢が大切です。

人間ですから、先入観を持ったり、「…のハズだ」と推測で決めてしまう気持ちもわかるのですが、常に冷静に俯瞰でモノを見る姿勢が求められます。

ボクは、なかなかできないです。

常に先入観が邪魔をします。
また、すべてを正確に把握することは難しいですね。

ですから、勉強はやめませんし、ひとつのテーマに対し、いろいろな角度から書かれた書籍を読むように努力をしています。

冷静で、俯瞰でモノを見る姿勢として、

「世の中は、正規分布している」

と、認識することです。

正規分布 normal distribution

 確率密度関数が

 で与えられる連続変数の分布。

備考:正規分布は、平均μと分散σ^2によって定まる。
記号N(μ,σ^2)で表すことが多い。
  
特にN(0,1^2)の場合、標準正規分布という。
中心極限定理より、独立な確率変数の和の極限分布は、正規分布に従うことなどから、理論上でも実用上でも最も重要な分布であり、計量値の検定、推定の多くは正規分布に従う母集団からの標本であることに基礎をおいている。

ガウス(K.Gauss)が測定の中に含まれる誤差の理論の理論を説明することに用いたことから、ガウス分布とも呼ばれる。


クオリティマネジメント用語辞典(2004年発行 吉澤正 日本規格協会)より引用
 (グラフは参照し、QCたかがExcelで作成)
 
言葉も数式も、難しいことが書いてあります。

ですから、覚える必要はないのですが、要約すると、

「実用上で重要な分布で、多くは正規分布に従うことに基礎をおいている」

ということになります。

もう少しかみ砕くと、

「世の中の多くのことは、正規分布している。
 品質管理の手法はこの考え方を基本としている」

です。

正規分布のグラフの書き方は、別の記事に紹介しています。



「正規分布」の表面を理解しよう

「正規分布」について「分布」と「グラフの見方」で簡単に説明します。

まず、「分布」についてですが、「分布」は「色々な事象のちらばり」です。

例えば、高校2年生の身長を調べたとします。
170cmのヒトも192cmのヒトも148cmのヒトもいます。
色々な身長のヒトがいるはずです。

色々な身長のヒトがバラバラにランダムに集まっている様子、これを「分布」と呼びます。

次に「グラフの見方」について説明します。

グラフの横軸(x軸)の真ん中(0の位置)、ここは「分布の中心」です。
「分布の中心」は、いわゆる「平均値」です。
身長の例でいえば「高校2年生の平均身長が分布の中心」となります。

グラフの縦軸(y軸)は、わかりやすく「発生する回数」としましょうか。
正確に言えば、「確率密度」ですが、今は「数字が大きい方が発生する回数が多い」と思ってもらえればよいです。

高校2年2組の教室に入って、適当に「キミの身長いくつ?」と聞いたときを想像してもらえばよいです。

グラフの真ん中「分布の中心」が「発生する回数が一番多い」、つまり「高校2年生の身長は、平均値のヒトが一番多い」となります。

次に、グラフの横軸(x軸)が左右にずれると、シンメトリーに縦軸(y軸)は下がってきます。
ですから、「分布の中心から、左右にずれると、発生する回数が減ってくる」となります。

グラフの横軸(x軸)「3とかー3」のあたりは、平均値から大きく外れた状態です。この状態では、縦軸(y軸)が「0」に近いので、ほとんど発生しない状態と言えます。

つまり「高校2年生の身長で、平均値から大きく外れているヒト(200cmのヒトとか140cmのヒト)は、ほとんどいない」となります。

どうでしょう?なんとなく、皆さんの感覚と一致するのではないでしょうか。

平均値を中心にして、発生回数が一番多い。
そして、その発生回数は、左右対称にどんどん下がっていく。

このような形で事象がちらばっている状態、つまりこのような形の分布を「正規分布」と呼ぶわけです。
グラフを見てもらうと分かるように「正規分布」のちらばりは、教会の釣り鐘に似ていることから、「釣鐘型分布」とか「ベルカーブ」などと呼ばれています。

「正規分布」は、この先からどんどんおもしろくなっていくのですが、この記事ではここまでにしましょう。
ここから先は、また別の機会で。

ヒトは「正規分布」する

「正規分布」という分布は、世の中のあらゆる場面で当てはまると言われています。

先ほど例として使用した身長もそうですし、テストの成績なんかもそうです。

テストの成績は、特別に「偏差値」として計算をされることで有名です。
この「偏差値」は「正規分布」を基本として、自分の点数は、全体の分布に対し、どのあたりにいるのかを知ることができます。

工業分野でいえば、加工後の寸法とか、金型プレス後の寸法もそうです。
食料分野とかであれば、火加減、塩加減。
医療分野では、血圧とかもそうでしょうか。

「正規分布」をする事象というのは、数えればキリがありませんが、逆に言えば、色々な事象が「正規分布」の考え方ひとつで説明ができる、ということです。

ですから、ヒトに対しても「正規分布」で説明ができるのですね。

身長もヒトに関わることですね。
他にも、災害時のヒトの行動とか、買い物するときの選択とかもそうです。
つまり、人間の行動や心理なども「正規分布」で説明できてしまうのですね。

このように「社会」に属しているヒトが「正規分布」で説明できるのですから、当然「組織」で働くヒトにも例外はありません。

会社への忠誠心、向上心、スキルや知識、モラル、やる気・・・

これらも正規分布をするのです。

品質管理の教科書に書いてあるような理論や考え方は、すべて「モデルケース」と考えてよいでしょう。
「組織」に働くヒトは「こうあるべきだ」「こうするべきだ」を前提で議論されています。
全員が同じ方向を向いていることを基本としています。

果たして、その前提通りになるでしょうか?

例えば、ある会社のインタビューで

「弊社は、全員一丸となって、問題解決に努力している」

と社長が言ったとします。

それは、真実でしょうか?
全員が一丸となることなど、ありえるのでしょうか?

ありえません。

「やる気があるヒト」
「やる気は普通で言われたからやるヒト」
「やる気がなく、やったフリをしているヒト」

このように「正規分布」するのが正常です。
全員が一丸など、分布を無視し、現実をまるで見ていません。

この話をすると有名な「性善説」と「性悪説」の話になりますが、

「みんながやってくれると信じている」
これは、ありえません。やらないヒトは必ずいます。

「みんながやらないと思って未然防止をしよう」
これも、ありえません。ちゃんとやってくれるヒトは必ずいます。

ですから、このような二元論はまったくの無意味です。
「白か黒か」ではなく、「白も黒も」が正解です。

白いものはより白く、黒いものはより黒く

白いものを黒くする努力は無駄です。
同じく、黒いものを白くする努力も無駄です。

白いものがグレーに、黒いものがグレーになるだけです。

グレーは、白でも黒でもありません。

白いものが必要だったはず。
そして黒いものも必要だったはず。

「正規分布」を見てわかるように、グレーは分布の中心であって、一番発生回数が高いのです。
逆に白と黒は、めったに発生しないものです。

貴重な存在です。

ですから、

白いものには「白いものがより白くなること」をさせれば、よいのです。
黒いものには「黒いものがより黒くなること」をさせれば、よいのです。

つまり、一人ひとりの個性にあった仕事をさせて上げればよいのです。

当たり前のようで、とても難しいことです。
組織が大きくなればなるほど、個人は小さすぎて、その個人が何を得意としているのか、見えなくなります。

品質管理においてもそうです。
いままでは全体の最適化を行うため、リスク防止などの対策をしていればよかったのですが、全体でひとまとめにしていては、各個人に最適なリスク防止になっているのか判断することができません。

とはいえ、各個人に最適なリスク防止をそれぞれ実施していれば、品質管理としての仕事が個人倍に膨れ上がります。

個人倍ですから、組織が大きければ大きいほどヒトもカネも必要になってしまいます。

このような事態は避けなければいけません。
そんな余裕は、今の日本にありません。

ですから、もはや、どこかを捨てるしかありません。
捨てると言っても、仕事を捨てるわけではなく、ヒトが関わることを捨てるのです。

つまり、自動化であったり、AIであったり、DXという選択肢です。
スーパーでレジ打ちのヒトが消えたように、機械ができる仕事しかできないヒトは捨ててしまえばよいのです。

そして、捨ててしまったヒトが本当に得意な仕事を、組織は見出し、新しいステージで活躍してもらえばよいのです。

白か黒かだけではなく、赤にも青にも黄色にも選択肢はあるはずです。

機械ができる仕事しかできないヒトは、会社にいらない、と本当に捨ててしまっては、そのヒトが持っていた潜在能力を見出さないまま、捨てることになります。
会社に利益をもたらすヒトだったかもしれないのに。

問題は、そういうヒトをどうやって見出すかです。

残念ながら、これについては、まだ答えを出せていません。
ひとつのアイディアとしては、会社への忠誠心、向上心、スキルや知識、モラル、やる気などの要素を数値化して、会社の利益や貢献度との相関を求めればよい、と考えています。

この研究は引き続き行っていきますので、いつかご報告できたらと思います。

ヒトが「正規分布」することを理解すれば、一方向だけを見た品質管理は危険であることが理解できたと思います。

ヒトは機械ではありません。
「正規分布」する心を持っています。

「正規分布」の中でヒトのベクトルがバラバラであっても、全員がウェルビーイングを享受できる社会や組織を作ることに、品質管理の本当の使命があるのだと思います。

そんな社会を目指し、努力していきましょう!

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自己紹介

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品質管理に関するブログ「QCたかのたか流QC」では、自身の経験を活かし、品質管理への疑問、新しい提案、QCスキルのテクニックなどを配信。 「みんながハッピ〜♫になる品質管理を!」をポリシーに活動中。 品質管理検定1級合格。 日本品質管理学会所属。 機械加工、設計を経て、現在は半導体業界のメーカーで品質管理に従事。

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