「5S」をアップデートする。新時代が求めているのは「5S2.0」

2023/03/26

QC検定 品質管理

t f B! P L
最終更新日:2023年8月15日

どうも、おばんです。QCたかです。

いつまでも、きれいな部屋で過ごしたいと思います。

ですが、いつの間にか部屋の中はぐっちゃぐちゃ・・・

でも、おかあさんに「掃除をしなさい!」と言われれば、言われるほど「イラッ!?」としませんか?

「今からやろうと思っていたんだよ・・・」

今日はそんな話です。
最後まで、見て行ってくださいね。

 

なぜ「5S」?

「5S」を知っていますか?

「5S」は「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」をひとまとめにパッケージして表現した言葉です。

とは言っても、日常で使用されることは少ないと思います。
初めて聞く方もいるのでは?

ですが、製造業に従事する方や品質管理に関わる方にとっては、あまりに当たり前な言葉です。

ですから「今さら、『5S』の説明なんて・・・」と思われる方もいるかと。

今回、「5S」を取り上げる理由として、

当たり前すぎる「5S」からこそ、その当たり前に疑問を持たなくなっていないか?

と考えたからです。

これは「5S」に限った話ではありません。

教科書に書いてある当たり前が、本当に当たり前なのか?

品質管理の言葉は、科学技術のように、絶対に変わらない内容ではないと思います。

品質管理で扱う経営や組織のマネジメント手法は、時代時代で変わっていく内容だと思います。

ですが、残念なことに、品質管理の言葉は時代が進んでもバージョンアップされない「嫌い」があります。

そこに、ボクは常に疑問を感じているわけです。

変わらないことも大事ですが、時代とともに変わらなければいけないことがあると思うのです。

残念ですが、ボクたち日本人は変化を嫌う人種だと思います。
「変わらなければいけない」という意識が欠落している場面を多く感じます。

言い方を変えれば、新しいことへのチャレンジ意欲が低い封建的な社会だと思います。
そして封建的なことを「是」としてしまう国です。

封建的な社会は、日本で過ごすうえではメリットもあるでしょう。

強い上下関係の中で過ごせば、ストレスは感じるものの、自分が責任を負うことはありません。

責任がないことは、楽です。
上司からのストレスのほうが、全然マシです。

いつしか日本人は、責任のない仕事を好むようになりました。
そして(AI機能のない)ロボットのように考えることを止めて、貝のように過ごすことを美徳としてしまいました。

その結果、独自性を失ったうえ、過去のサビついた技術を守るため、自身の首が締まるようなルールを次から次へと作り、ルール順守という正義を貫き、その正義の確からしさまで確認するということに、大きな時間とカネを使っています。

このことは「世界最高峰の日本品質そのもの」なのですが、グローバルな時代に対しては、逆に足かせになっています。

つまり、日本人の美徳感がデメリットになっているわけです。

日本人は、無意識のうちに、変化を嫌う「現状維持バイアス」こそが日本の美しい文化だと、感じているように思います。

品質管理の分野についても同様のことが言える、とボクは思っています。

日本品質管理学会でも、変化に対し柔軟に検討しているとは思いますが、「5S」のような初歩的なところには、あまりメスを入れていない印象です。

ですから、ボクのような者がこのような場を使って、新しい考え方を提案していこうと思っているわけです。

ようやく「5S」の話に戻ってくるわけですが、「5S」は、ボクにとってアップデート対象です。

当たり前だと思っている「5S」は、今の時代にはあっていない。

だから「5S」をテーマに選んだ、ということです。

前置きが長くなりましたが、そろそろ「5S」について説明したいと思います。

「5S」とは・・・

「5S」は、下記の5つの言葉を示しています。

  • 整理(Seiri)
  • 整頓(Seiton)
  • 清掃(Seisou)
  • 清潔(Seiketsu)
  • しつけ(Shitsuke)

そして、それら5つの言葉をローマ字で表したときの、頭文字「S」が5つあるので、5つのSで「5S」という意味です。

定義は下記になります。


5S five 5's
職場の管理の前提となる整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(躾)について、日本語ローマ字表記で頭文字をとったもの(Z8141)

ークォリティマネジメント用語辞典(2004年出版 吉澤正 日本規格協会)より引用

それぞれの言葉には、意味が与えられています。

  • 整理…要るものと要らないものに分け、要らないものを捨てること
  • 整頓…決められたものを決められた場所に置き、いつでも取り出せ、使える状態にしておくこと
  • 清掃…常に掃除をして、職場をきれいな状態に保つこと
  • 清潔…整理・整頓・清掃を維持すること
  • しつけ…決められたことを正しく守る習慣を身に付けること

5Sの基本は、
まず「整理」から始めよう!
です。

最初から「整頓」をしてはいけません。

まずは「捨てましょう」から始まります。

要らないものを捨てることで、そこにスペースが生まれます。

そのスペースを使って、「整頓」をしていきましょう、となるわけです。

そして「整頓」が終わったら、その場はピッカピカに「掃除」をしておきましょう、
ということです。

これら「整理」「整頓」「清掃」の3つの言葉自体は、聞きなれた言葉だし、言葉そのものに違和感はないと思います。

会社によっては、この3つを「3S」として日常の活動として取り組んでいるところもあると思います。

ただ、与えられている「意味」は、一般的にボクたちが考えている「意味」とはちょっと違うと思いませんか?
「プレゼント」を付けすぎ、と思います。

それでは、一般的な「意味」との差を見てみましょう。
アンダーラインの「ないもの」が「5S」の意味、アンダーラインの「あるもの」が「一般的」な意味です。

  • 整理…要るものと要らないものに分け、要らないものを捨てること
    1. 乱れた状態にあるものを整え、秩序正しくすること
    2. 不必要なものを取り除くこと
  • 整頓…決められたものを決められた場所に置き、いつでも取り出せ、使える状態にしておくこと
    1. きちんとかたづけること
  • 清掃…常に掃除をして、職場をきれいな状態に保つこと
    1. きれいに掃除すること
  • 清潔…整理・整頓・清掃を維持すること
    1. よごれがなくきれいなこと
  • しつけ…決められたことを正しく守る習慣を身に付けること
    1. 礼儀作法を教えて身につけさせること

どうですか?

決して、的外れなではないですが、「プレゼント」がいっぱいついていませんか?

実際は「整理・整頓・清掃・清潔」の4語の意味に大差ないじゃないですか。

それでも、頭文字に「S」がつく、それっぽい言葉を並べ、社会人に身に付けてほしい言葉をちりばめてしまったのだと思います。

そして、一番の悪は「しつけ」だと思います。

「しつけ」を加えることで、急に上下関係というか、社会的な拘束感が出てきます。

要は、日本独自の社会主義思想がここに出てきます。

「労働者は命令に従い、強制的に働きなさい」と意識的に刷り込むための、経営者本位のツールではないかと感じます。

この昭和感が、今の時代にあっていないからこそ「アップデートが必要なのだ」とボクは思うわけです。

「5S」ができた理由を少し考える。

当時の社会は、男社会でした。
男は外で働く、女は家事をする。

男たちにとって、外で働き、おカネと社会的信頼を得ることがエネルギーだったと思います。

だから家での仕事はなし。

家でも、偉ぶって、カッコつけて、が普通だったのだと思います。

ですから、「整理・整頓・清掃・清潔」は、女がやる仕事で、「しつけ」だけが男の仕事だったと思います。

「整理・整頓・清掃・清潔」など、やったことも考えたこともない男たちが、社会に出て一同に働くわけです。

そりゃ、整理、整頓なんて、できるわけがない。

工具はそこら中に投げっぱなし。
書類は山積み。
タバコは好き勝手吸っては捨てる。

それが、男の仕事場だ!
なんてカッコつけてみても、言い訳にしかならない。

こんなことですから、職場が清潔になんてなるはずがない訳です。

その状況を変えたい、と思った素晴らしい方がいるのでしょうね。

その方は先進的な考え方をしていたと思います。

もしかしたら「4S」を考えたのは、女性なのではないかと勝手に思います。

でも、最後に「しつけ」を付け加えたがった男がいたのだと思います。

「しつけ」をつけないと、男ととしての自分が存在できないから。

他者からの承認がないと、当時の男は生きられない。
(今でもそうかもしれませんが)

本当は、「教育」とか「トレーニング」とか付けたかったのだと思います。

でも頭文字は、Sの付くローマ字じゃなきゃいけない、という制約があったわけです。
その中で、男たちの生きざまにぴったりとある「しつけ」を見つけたのだと思います。

ですが、そもそも「整理・整頓・清掃・清潔」ができない男たちに、それらについての教育と「しつけ」なんかできるわけないじゃないですか。

だって、やったことがないのだから。

先輩の机はめちゃくちゃ汚いのに、

「3Sがなってない!ちゃんとしろ!!整理、整頓は働くことの基本だ!!!」

なーんて言われて、ボクたちは何を感じればよいのですか?

「何言ってんだ!俺はちゃんとできてるぞ!」

という先輩や上司のパソコンを覗いて見てください。

デスクトップにはフォルダやファイルが散漫していませんか?
メールは未読で溜まっていませんか?
これらは現代の整理・整頓になりますが、どうですか?

できていない先輩・上司はいますよ。

ボクは、そんなにヒトたちに「しつけ」をされたいとは思いません。

ちなみに、ボクのPCのデスクトップには、ファイルがそのまま置いてあることはありませんし、フォルダもごくわずかです。

とはいえ、色々なフォルダにアクセスはしないといけませんので、そのリンク先を一覧にして、一発でアクセスできるようにしています。

中にはファイルのアクセス先をQRコード化して、バーコードリーダーでアクセスできるようにもしています。

これは、自身の創意工夫であって、「しつけ」されたからではないです。

自身に

  • 5Sに対する問題意識がある
  • 変えなければいけない、と思っている
  • 変えるためのアイディアを持っている
  • アイディアを行動に移せる
  • この行動を楽しんでいる

この考えがないと、真の「5S」はできないのではないかと思います。

ヒトは、命令通り動く方が好きだ、と冒頭に言いました。

でも労働人口が減っている状態で、命令しなければ動けない人材なんて必要ありません。

そして、命令する側のレベルも低くなる一方です。
この状況を変えなければ、製造業は衰退するばっかりです。

衰退を食い止めるには「命令される仕掛け」より「自発的に行動する仕掛け」をどんどん提案していくことが、これからの時代に必要なことなのだと、ボクは思います。
だから、古い「5S」はアップデートしなければいけない。

これが「5S2.0」だ!

ボクが提案する「5S2.0」は下記です。

  • Straighten out(ストライテン アウト)…困難・問題を取り除く
  • Specialize(スペシャライズ)…専門化する
  • Sustainable(サスティナブル)…持続可能な
  • Self-control(セルフ コントロール)…自己制御
  • Share(シェア)…共有する
素直に英語の頭文字「S」を5個繋げました。
英語がカッコいいから、とかの理由ではありませんが、実際は「イメージがわかりやすい英語」「響きが心地よい英語」を軸に考えました。

最初に思いついたのは「Self-Control」です。
この言葉を使いたかった、ということもあります。

あまり、説明もいらない言葉たちですが、ひとつづつボクの考えを載せたいと思います。

Straighten out(ストライテン アウト)…困難・問題を取り除く

「旧5S」の根本は、問題を未然に防ぐことにあったと思います。

例えば、違う工具を使わないように使っていない工具は捨ててしまう、とか、机の上のゴミが製品に誤って入らないようにする、とか。

つまり、「整理・整頓・掃除」は問題を取り除くための行為(Doing)です。

「問題を取り除く」ことが主たる目的であって、会社の上層部に「きれいにしているな」と思われることが目的ではありません。

目的を見誤ってしまい、褒められるために、わざわざ使いにくい場所に隠してしまっては、意味がありません。

目的が異なった使われ方を防ぐためには、はっきりと「Straighten out」と表現した方がよいです。
旧5Sの表現では、言葉が本来持つイメージが先行してしまい、使い所を誤って理解してしまうヒトがいますので、アップデートが必要です。

Specialize(スペシャライズ)…専門化する

1工程1作業を徹底していこう、と思いを込めています。

マルチタスク(多能工化)の方が効率的だ、と思う方もいるかもしれません。

ですが、ヒトはマルチタスクを苦手としています。
そういう脳の構造をしています。

ヒトは、何かを選択するたびに脳がエネルギーを使用します。

その選択肢が多くなればなるほど、考えることが増え、エネルギーを大量に消費してしまいます。

そして、脳に蓄えたエネルギー(パソコンで言えばバッテリー)がゼロになると、思考停止になります。
そこで、判断能力を失ったことでミスが発生し、不適合につながるわけです。

要は、選択する回数を減らし、労働時間中にエネルギーをゼロにしない配慮が必要、ということです。

その思いが、「Specialize」に含まれています。

Sustainable(サスティナブル)…持続可能な

旧5Sの「清潔」に該当する部分です。
「清潔」が意味していた、整理・整頓の状態を維持する、という言葉に間違いはありません。
しかし、維持することに相当な労力が掛かってしまっては、本末転倒です。

ですから、持続可能な改善でなければ、いけません。
その思いを、SDGsの「S」から引用し「Sustainable」を採用しました。

維持することは、ある程度労力が掛かります。
ですので、無理のない範囲で維持できる状態のStraighten out、Specializeを実施することを意識しましょう。

Self-control(セルフ コントロール)…自己制御

「5S2.0」の本命です。

自分が問題意識を持たないといけない。
ヒトに言われた命令には、必ず反発が生まれます。

そうではなくて「自分自身がどうしたいのか」「どう変えたいのか」を強く思う必要があります。

上司 
「この工具はここにあったら、美しくない。片づけなさい!」

あなた
「ここが一番使いやすいのです!」

上司
「口答えするな!午後から社長がくるから、全部片づけなさい!」

あなた
「社長のご機嫌を一時的に取るための5S2.0はやっていません。自分自身のためであって、結果的にこの行動こそが会社の利益につながります。それが、真に社長のご機嫌を取る方法です!」

となるのが、本当の「5S2.0」です。
自分自身を律し、行動していくことこそが、この「Self-control」に込められています。

Share(シェア)…共有する

ヒトは、共感を得たい生き物です。
承認が得られないと、ストレスで死んでしまうのです。

ですから、自身のエリアは「Share」するべきです。
その行動が、共感を生んだり、新しいアイディアを生み出します。

「Self-Control」は自分自身の管理を重視しましたが、自分勝手とは違います。

自己実現をするための行動は、利他的な行動になります。
利他的に行動したのですから、それは必ず共感を得られます。

だから「Share」をすることで、共感を得て、自己の喜び「ウェル・ビーイング」につなげてほしい、という想いをこの言葉に乗せました。

新時代を生き抜くビジネスマインド

いかがだったでしょうか。

この「5S2.0」には、新時代を生き抜くための指針を込めたつもりです。

働き方は多様化し、昭和のような仕事はもうできませんし、する必要もありません。

新時代に生きるヒトたちが、自分らしく働くための心構えになればよいですし、昭和・平成のヒトも思考をアップデートし、取り残されないようにしてもらいたいです。

日本は、品質管理のアップデートをしてこなかったことも要因にあると思うのですが、日本は、世界からだいぶ取り残されたものと感じます。

古い考え方を是としてしまっている、また、それを変えようとしないため、取り残されたのだと思います。

現状を変化されるには、時間がかかるかもしれません。

そして、この「5S2.0」が浸透するには、数十年の時間が必要かもしれません。

数十年後には、また時代が変わり、すでに「5S2.0」も古くなっているかもしれません。

しかし、それでよいのです。
この提言自身が「考え方は変化させてもいいんだ!」という実績となれば、時代時代に合わせて、新時代のヒトたちが変えていってくれます。

このアップデートは、その布石でありたい。

一人でも多くの方が共感して頂き、この「5S2.0」を発信して頂ければ、未来は変わると信じています。

まずは、自分自身から変わっていきましょう。

オススメ書籍



自分自身を律する、行動するアクションは、「ヨガ」の考え方に近かったと思います。
それは「断捨離」という考え方に由来するものです。

断捨離」は片づけの手法ではありません。
「断・捨」は実際の行動ですが、「離」には、自分自身と向き合い、今を生きる大切さを教えてくれます。

そんなことを教えてくれる良書でしたので、オススメします。

自己紹介

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品質管理に関するブログ「QCたかのたか流QC」では、自身の経験を活かし、品質管理への疑問、新しい提案、QCスキルのテクニックなどを配信。 「みんながハッピ〜♫になる品質管理を!」をポリシーに活動中。 品質管理検定1級合格。 日本品質管理学会所属。 機械加工、設計を経て、現在は半導体業界のメーカーで品質管理に従事。

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